ここ数十年、運動らしき運動もせず、パソコンを前にして一日中を過ごすことも決して少なくなかった。職場までは車で通勤だし、仕事で外回りもほぼ入り口まで車で乗り付ける。万歩計をつけていたら、おそらく毎日2000歩にならないんじゃないか?と思うくらい歩かない日々。車を停めるにしても、できるだけ入り口に近いところを狙って行くほど、歩くこと自体が「苦」になっていた。
決して太っては居ないが、これまで一度脂肪肝といわれ、ぽっこりおなかを、お酒の量と昼食の量をセーブして乗り切っていた。
今年の4月にめでたく?職場の異動があり、電車通勤することになったのをきっかけに、歩くことの重要性や爽快感を改めて認識した。毎日通勤で半強制的に歩かせられることで、少なくとも歩くことが「苦」ではなくなりつつある。本屋で何気なく立ち読みしたビーパルをきっかけに、子どもが小さかった頃のキャンプを思い出し、俄然アウトドア−ライフに再度興味がわいてきた。そこで山と渓谷社の書籍を購入。いきなり登山は無理としても、低い山の登山やトレッキング、ハイキングが魅力的に映る。
しかし心配事がある。十年以上前になるが、息子と一緒に泉ヶ岳に登ったときに、山から駆け下りて以来膝を痛めている。また昨年1月に初めて腰痛を経験。以来重い物を持つと、2〜3日腰痛が残るようになった。まあリハビリもかねてトライしてみようという軽い気持ちで、試みをスタートした。

トレッキング一回目は、5月の連休も終わる頃、恐る恐る泉ヶ岳へ。しかもよせばいいのに滑降コースという家族向けではないコースにあえてチャレンジ。途中で心臓がバクバクいって(こんなのは子どもの時以来)、膝もガクガク、腿をあげることがつらい。何度もここで引き返そうと挫折しかかった。周りに誰もいないのを良いことに、ぶつぶつと文句を言いながら、途中残雪の残る坂道を這いつくばるようにしてなんとか登頂。とまあここまでは良かった。さすがに滑降コースをおりることはもう不可能、と家族向けコースの水神コースに一歩下りかかった途端、膝に痛みが走る。気のせいではなく、屈伸やもんだりしたがそれでも徐々に痛みがひどくなる。一歩一歩痛みが走るが、ここまで救急車だって来るわけないし、拾った棒きれを杖の代わりに長い時間をかけ、人が見たら笑ってしまうだろうカニ歩きになりながら、なんとか下山。やっぱり膝は全然完治していなかった。しかし次の日若干痛みが残るが、以外と早く痛みは消失。腰は全然痛まない。
これに気を良くし、次に北泉ヶ岳、面白山(おもしろやま)、達居森(たっこもり)、釜房山とあまり高低差の無いところを選んで足腰をならしていっている。

それにしても夏は虫がすごい。今日訪れた釜房山は、西登山口からの登山者は私が本日の最初らしくて、登山道の至る所が蜘蛛の巣だらけ。半袖からでている腕や顔に、蜘蛛の糸が絡み気持ち悪い。数日晴れてはいるが、山道は所々湿っていて、滑りやすくキノコや蚊が多い。蜘蛛の巣を払うために、棒きれを振り回しつつ歩くと、いたる木の根本に近いところから、蝉が驚いて飛び立つ。しかも寝起きなのか、生まれたてなのか、たいていひっくり返ってばたばたという大きな音を立てて、目くらめっぽう飛び立つので、こちらの方がびっくりする。低い山は、木々が鬱蒼として、昼なお暗く、湿気が多く、風も通さず、蚊や蛾や街では見かけない虫が飛びかい、思わず背筋が寒くなり、不気味な感じさえする。おそらく秋に来ればがっらっと印象が変わるのだろうと思いながら、いろは坂を登った。
頂上は394mで、眺望はなく鳥居と神社があるのみ。普通なら北側登山口におりるのだが、落石のため通行止め。膝に負担をかけないよう、棒きれを杖にして下山することにした。