先日の雨にたたられた無念さを挽回すべく、先週に引き続き須川を訪れる。できれば朝一から動き出し、秣岳(まぐさだけ)まで尾根伝いにミニ縦走したい。
週間天気予報では金曜は雨、土曜日曜は晴れの予想だ。金曜日の夜に家をでた。途中雨が降り出し明日の天気が心配になる。一関を過ぎ須川に入る手前で霧に包まれ久しぶりにフォグランプを点灯する。須川湖駐車場で一夜を過ごすことにした。車を止めたときには、満天の星空を見ることができた。これを写真に収めない手はない。車内で寝る準備をしていよいよ撮影開始。と思いきや突然の雨。山の天気は変わりやすい。いったん寝て目が覚めて天気が良ければ撮影をしよう。ということで眠りにつく。
寒さで目が覚めた。曇った窓ガラスを手で拭き、窓の外を覗うとやったー星空。あわてて防寒着を着込んで写真撮影。くっきりと天の川が見えている。岩洞湖以来の満天の星空に感激。Ricoh GR Digital IIIで撮影を開始。F1.9の明るいレンズを持っているので、暗がりでの撮影は得意なはず。だがファインダーがないためどこをとっているのかは、感だより。撮影したモノをプレイバックしてみても、全体が暗いから「北斗七星がきれいに撮れたな」程度しかわからない。どのように撮れているかは、家へ帰ってからの楽しみにしておこう。
人工的な光は一カ所、3Kmほど先の須川温泉の明かりがまぶしい。その他の明かりと言えば、時々雷が光り、西側の山並みが黒く浮かび出すのと、流れ星が時々スーッと軌跡を描いて横切るのみだ。
寒い!が一刻も無駄にしたくない。そうこうしているうちに撮った写真が青く輝いているのに気づいた。肉眼ではわからないが、夜が明けだしたらしい。空が紺とオレンジの見事なグラデーションを見せている。夢中でと言っても1枚撮影するのに120秒かかっている。そうそうは撮れない。

実際は真っ暗闇である。登山客らしい1台の車が入ってきたが真っ暗な駐車場でうろうろとヘッドライトをつけた怪しげなこちらの姿を見つけ、すごすごと出て行った。偶然にもそのおかげでおもしろい写真が撮れたのだが。

時計を見たら5時30分である。一眠りしたら出かけようとも思ったが、周りが白み始めたので出かけることに。須川の駐車場にはすでに登山客の車が5〜6台駐車している。5時38分出発する。山路は夕べの雨でぬかるんでいるが、木々の葉が濡れて美しい。遠くにまたガスがかかって来ている。雨具、スパッツは最初から着けて行く。

名残ヶ原から昭和湖までは天気が持っていたが、案の定昭和湖を過ぎて山頂を見上げると、栗駒山は雲の中であった。天狗平に着いた頃は先週と一緒で、ガスがかかって何も見えない。栗駒山へのルートをたどると小粒の雨が風にあおられ雨具に当たり、ぱらぱらと音をたてる。この雨は雰囲気的にすぐに回復しそうもない。これで山頂に行っても先週と同じで何も見えない。今回の目的は秣岳まで行ってみることにある。ルートを反対にとって秣岳へ向かう。入口から笹や木の枝が山路を多いポールで体を防御しながら悪路を進む。晴れなら見晴らしの良いであろう稜線にさしかかるとさらに風雨が強くなる。体を低くして通過しようとするが、下手をすると吹き飛ばされそうになる。須川側からの風に体を踏ん張りながら何とか進もうとするが、突如反対側からの風に変わったら、絶対に谷底に落っこちるぞ。おまえなんか来るなと意地悪されているようである。吹きっさらしの稜線がどのくらい続くかもわからない。いったん風が収まるまでどこかで待機しよう。と路を引き返す。天狗平にもどる途中草に覆われた平坦地があった。テントを張るのにちょうど良さそうなスペースである。今回は薄手の銀マットを適当な大きさに切って持参したのでここで広げて休憩することにした。しばし休んでいる内に雨はあがり風も弱くなってきたので、お湯を沸かしてカップ麺を食べることに。

お湯を多めに沸かし、残りのお湯でコーヒーを淹れてポットに詰めようと計画していたが、残念なことにサーモスを車に置いてきてしまったので、コーヒーはお預けである。テントを張ったらしばらくのんびりしたくなるような良い場所である。ゆっくりしている内に時々太陽が顔をのぞかせる瞬間があり、天気の回復を予感させる。秣岳方向から栗駒山頂めがけて、ガスがすごい勢いで流れていく。とうとう待っていた瞬間が訪れ天狗岩のあたりが見えてきた。天気が変わるのに2時間近くを要している。

いよいよチャンスである。栗駒目指して行動を開始する。天狗平はさっきとは打って変わって登山客で賑わっている。先週は見られなかった、天狗岩から山頂までの稜線は片側が崖になっているのがはっきり見える。須川方面も明るくなって昭和湖が見えている。山頂は先週にもまして大勢のトレッカーで賑わっている。山頂はみやぎ側からは割と簡単にたどり着ける。数人は雨具も着けずに居るので、宮城側は雨が無かったのかもしれない。私一人だけが上下雨具を来て、スパッツとズボンを泥だらけにしていた。

そのまま一端天狗平までもどり、先ほどの稜線までたどり着く。こんども風は出てきたが先ほどほど強くはないし、晴れて気持ちの良い場所に変わり昭和湖や須川湖まできれいに見えていた。

秣岳までは一端鞍部を超えて尾根伝いに行けるのが見えている。鞍部下りは木が生い茂り山路には日が差さないと見えて、ぬかるんだ悪路である。これまでどろ路に着いた足跡からみて、今日は私の前に誰かが一人だけこの路を通過している。この足跡は名残ヶ原を過ぎたあたりから気になっていた。足跡と歩幅から察すればほぼ同じくらいの体格の男性だろうと想像できる。おそらく私よりもずっと早く出発して天気が崩れる前に秣岳に向かったのであろう。私が秣岳に向かってから周りには登山客は全く見あたらなかったが、下りきったあたりで10名程度の若い女性のグループとすれ違った。その後数人とすれ違いちょっとほっとする。まわりに誰もいない場合、足跡一つだけでも心強いモノである。
鞍部通過途中でまた雨が降り出し、しろがね高原では、霧の中から見える木々のシルエットが美しい。秣岳手前でようやくガスが消えてきてしろがね高原が眼下に見えてきた。


山頂で一休みしている内に再び栗駒山を見ることができた。休憩している内に私の後から2人ソロの男性とご夫婦が到着した。以外と後続者が居たんだ。
秣岳からの下りは非常に悪路である。途中でとうとう膝が痛み出した。出発から7時間近く経っている。

ふりかえると秣岳からの山路がうねうねと見えている。道路の音が聞こえ出す頃には、落ち葉の絨毯の上を歩く気持ちの良い山路に変化していた。今回は1日の内に二度三度と変わる山の天気を体験した。山の装備はどんな状況にも対応できるよう備えることの大切さを身をもって体験した。その後疲れた体を温泉につかって癒し、十分栗駒山を堪能し満足しつつ帰路についた。先週今週とも須川付近は渋滞が起きていたようだ。幸い時間がずれて渋滞に巻き込まれるようなことはなかった。しかし残念なことに紅葉は先週ピークを過ぎたようで緋の絨毯のような紅葉を目にすることはできなかった。来年に期待しよう。